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Alteilの爆弾及び無課金青その他についてつらつらと。 知人にだけ通用すれば良いかなとか言う割と閉鎖的な日記

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「ちくしょう、父さんが大切にしていたポケモンが…」

 戦闘の末、キキョウジムのリーダー、ハヤトはそう呟いた。
 彼も僕と似たような境遇だったのかも知れない。

 前は変なおっさんが立っていてマダツボミの塔に行けと言われるだけだったが…キキョウジムは相変わらずがらんとしていた。おっさんは先に進めと言ってくれているが、無人の道場で何をしろというのか。馬鹿馬鹿しいと思いながら数歩進むと、突然足元の地面が跳ね上がった。そして僕を乗せた床の一部はリフトとかエレベーターとは比べ物にならないスピードで上昇し、ジムの天井近くで止まった。高くて下からでは視界に入らなかった天井部、そこには細い梁が通路のように張られていた。どうやらここが、キキョウジムのメインに当たるようだ。
「変な所に金かかってるな…」
 上昇時に悲鳴を上げてしまったのが恥ずかしい。クチートもちょっと目を回したらしく、先に進むよう促すと物凄い目でこちらを見てきた。明らかに機嫌が悪い。

 上昇する床にも無かった事から明らかだが、天井の梁には手すりなどという甘っちょろいものはついていない。落ちたらどうするんだと思いながら恐る恐る進むと、横合いから軽く体を押された。危うくバランスを崩しかけて涙目になりながらそちらを睨む。そこにはジムに所属しているらしいトレーナーがニヤニヤ笑いながら立っていた。どうやら上昇時の悲鳴を聞いて、対戦ついでにからかいにきたらしい。冗談ではない、鳥ポケモンを従えているこの人達は落ちる事などないのだろうが、こちらは足を踏み外したら一大事だ。

 拒否しようと思ったが、ふと思い至る事があって顔をあげる。前にここに来た時も無人だと思っていたが、彼等はその時もここにずっと居たのか。あの時からずっと見下ろされていたのかと思うと…なんというか、敵意が湧いた。飛べるから、どうだというのだ。
「クチート、かみなりパンチ!」
 命令する声は、今までで一番覇気に満ちていたと思う。繰り出されたオニスズメに、電気を纏った拳は抜群の効果を発揮するだろう。前へと飛び出したクチートは、オニスズメが動く間もなく大口を開け…凄惨な音と共に哀れな小鳥を噛み砕いた。

 歯に挟まったそれを、クチートがペッと吐き出す。言うまでも無いが命令無視だ。僕は「噛み砕け」とは言っていない。けれど、まぁ、何か。ついでにトレーナーの方まで威嚇するクチートを見ていたら溜飲が下がったので良しとした。
「よくやった、クチート」
 無視されたがそれも良しとしておきたい。

 クチートの機嫌が悪かったのもあってか、ジムのトレーナーはあっさり沈めてジムリーダーの所まで辿り着けた。リーダーの名前はハヤト。ここの鳥使い達の親玉だと思って良いだろう。「鳥ポケモンの気持ちを知るために高いところで過ごしている」とトレーナーの一人が言っていたが、これはこのリーダーの提案なのだろうか。だとしたらあまりお近づきにはなりたくない。
「大空を華麗に舞う鳥ポケモンの本当の凄さ、思い知らせてやるよ!」
 などと考えていたら戦いは始まっていた。

 戦いは酷い泥試合になった。ハヤトの先発、ポッポが最初に取った行動は、砂かけによる目潰しだったためだ。いい加減不機嫌なのも治っていたのか、速攻で昼寝を始めたクチートに向かって、ポッポがこれでもかと言わんばかりに砂を浴びせる。寝ているのに目潰しも何も無いだろうと思ったが、多分起きて目を開けたときに地獄を見るのだろう。
 …そして案の定地獄は訪れた。ただでさえ言う事を聞かず、敵を攻撃しようとするのは七回に一回程度だというのに。完全に視界を潰され、最低まで命中を下げられたクチートの攻撃は全く当たる気配がない。ポッポの体当たりもほとんど効いていないのだが、無茶苦茶に攻撃した結果クチートは自分を傷つけてしまっている。キズぐすりを使おうとした手が噛まれかけ、僕は何度か慌てて後退する事になった。

 でたらめな攻撃は、ポッポが体当たりをする気力を失った頃にようやく命中した。先程のオニスズメ同様巨大な口に噛み砕かれ、意味の無い砂かけを連打していたポッポが沈む。そして現れた後発は、ポッポの進化系、ピジョンだった。ポッポには使えなかった技、かぜおこしを駆使して攻撃してくるピジョン。だがダメージはポッポの体当たりとさして変わらない。このクチートを倒すつもりなら二桁単位でレベルを上げてこないと駄目だろう。

 もう「砂かけジム」に名前を変えた方が良い。そう思うくらいに砂かけの効果は強力だった。言う事をきかない上に当たらない攻撃。しかし自分で自分に負わせてしまう傷はどんどん増えていく。ポッポの時と同じ偶然が訪れたのは、最早キズぐすりも使い切り、後が無くなって居た時だった。激戦…と言えば激戦だったのかもしれない。勝つか負けるかの瀬戸際であったのは確かだ。噛み砕かれて倒れるピジョンを見遣り、僕は深くため息をついた。

 勝った事を教えて目を拭ってやると、クチートは礼を言う変わりにこちらを思いっきり噛もうとした。目の見えない状況で指示だけされるのは相当フラストレーションが溜まったらしい。自傷の結果今にも倒れそうな体調でなければ、僕もここの鳥達と同じように噛み砕かれていたかも知れない。肝を冷やしながら、フラフラになったクチートをボールに仕舞う。ポケモンセンターで回復すれば少しは機嫌も直るだろうか、とりあえずはそれを祈りたい。

 ジムリーダーに勝利した証として、ハヤトからウイングバッジを受け取った。これを集める事でポケモンリーグへの挑戦権を得られるほか、これを持っているとレベル20までのポケモンは実力を認めて言う事を聞いてくれるらしい。バッジにそんな効果があるというのは初耳だが、クチートのレベルは70だ。こいつに実力を認めさせるにはあとどれくらいかかるのだろう。

「ちくしょう、父さんが大切にしていたポケモンが…」
 去り際に、ハヤトはピジョンを抱きながらそう呟いた。その言葉にはっとさせられ、はじめて彼の顔をちゃんと見た。とかく男は旅に出る、ここはそんな世界だ。父親と会えない子供もそう珍しくは無い。彼も、もしかしたら僕と似た状況を経てきたのかもしれない。
 父のポケモンだと彼は言った。ならばこのピジョンに実力を認めさせるまで、今の僕と同じ様な苦労をしてきたのでは。そう考えると親近感が湧き、僕は思わず右手を彼に差し出していた。

 躊躇いがちにではあるが、握り返されるその手。言う事を聞かないピジョンを、彼は恐らく苦労して手懐けたのだろう。そして、ジムリーダーの地位を手に出来るまでに使いこなしてみせたと。
 僕等は固く握手を交わす。僕も彼の実力を認めようと思う。振り返れば彼の指示は的確で、ピジョンのかぜおこしも見事なものだった。何度も目の前で見た僕には、それが良く分かっている。何度も、何度も。こちらが砂かけのおかげで身動きが取れなくなって居るのを良い事に、何度も何度も何度も…

 僕は、握った右手に思い切り力を込めた。 このページのトップへ

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