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Alteilの爆弾及び無課金青その他についてつらつらと。 知人にだけ通用すれば良いかなとか言う割と閉鎖的な日記

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「そりゃ凄い事だよ! なんたってオーキド博士はトレーナーの才能を見抜く力の持ち主だからね」

 オーキド博士にポケモン図鑑を貰った。お使いを終えてそう報告をすると、近所に住んでいるウツギという名のおっさんは、嬉しそうに言った。

 思わず鼻で笑ってしまった。物凄い目で睨まれたので、適当な事を言って家に逃げ帰った。だってそうだろう。三年前に二人もチャンピオンを輩出したとは言え、オーキドのおっさんはトレーナーの育成に関しては全く関わっていない。孫とご近所さんに図鑑を渡したら勝手に地区制覇までしてしまったというのが真相なのは、ちょっと調べれば誰にでも分かる。妙な箔がついてしまってあのおっさんも迷惑している事だろう。まぁ「私が育てた」みたいな顔してテレビにも出てたからそうでもないのかも知れないが。

 連れ歩いていたヒノアラシをボールに仕舞い、自室のベッドに寝転んで天井を見上げた。
 おっさんどもの評価は眉唾だが、思い返せば今日一日は驚くほど順調だったと思う。ウツギのおっさんに珍しいポケモンをもらい、野生のポケモンも何匹か捕まえた。アンテナみたいな髪型の子に絡まれたのは意外だったが、とにかくその戦闘でも勝利を収めた。何より偶然会ったオーキド博士に図鑑を渡されたというのが出来すぎな気がする。
 まるで僕が選ばれて、「そして伝説が始まる」みたいなテロップが流れそうな展開だ。冷ややかな反応を返してしまったが、才能があるかもという話も嬉しくなかったわけではない。

 …しかし、僕は薄々勘付いていた。オープニングとしては大成功だと思うが、それは運が良かっただけに過ぎない。この恵まれた状況に出くわせば、僕でなくても誰でも出来る事だと言える。そんな配役に、偶然僕が座ってしまっただけだろう。こんな幸運がいつまでも続くわけがない。ゲームの主人公みたいなコースをこのまま進んでいくには、所謂レベル上げとか試行錯誤とかの努力が必要になるのだろう。
 そうなったら僕は、多分途中で投げ出す。うっすらとだが自覚はしている、僕はそういう性格だ。
 だから…

「無理だよ、できるわけがない」

 夕飯を食べた後、かかってきた電話の相手に僕はそうこぼしていた。相手は、僕の遠い親戚の男の子だ。
「そうかい?」
 僕と同じ年のはずの彼は、ちょっと大人びた感じで答えた。確かシンオウとかいう田舎の方で、トレーナーをやっているという話だったが…
「そうだよ。今日はたまたま運良く進んだけれど、これからは才能とか努力とか、根性とかが必要になってくるんでしょ?」
 お膳立てされていた部分を抜けたら、多分僕はもう駄目だ。数時間前の自問自答をなぞるように僕は言った。トレーナーとして先輩である彼はそれを否定しなかった。やっぱりか。
「偶然環境が整ってたから、今日は上手くいったんだ?」
 その代わりに、彼はそう尋ねてきた。
「うん」
「んー…」
 即答する僕に、少し考えるように唸った後、彼は言った。
「じゃあ僕が君をバックアップしてあげよう」
「…え?」

 一週間後、彼は僕に会いに来た。その間、僕はただひたすらポケウォーカーという奴で遊んでいた。それでドードーを捕獲したが、まぁ。要するに町から一歩も外に出ていない。
 そんな報告もそこそこに、僕は持ってきてと言われていた三匹のポケモンを彼に手渡す。ポッポ、コラッタ、そしてヒノアラシ。ばいばい、僕の初めて捕まえたポケモン達。そして手渡した三匹の代わりに、彼から三つのモンスターボールを受け取った。ウツギのおっさんにもらったヒノアラシを速攻で手放すのには罪悪感があったが、多分彼の方が有効に使うだろうし、ヒノアラシもその方が幸せだろう。

 ちなみに先日の彼の提案は、こうだ。「自分が極力手を貸してお膳立てをするから、それでいけるところまでいってみろ」と。先日あった「幸運」を、自分が長引かせてやろうというつもりらしい。確かに先輩である彼の力を借りれば、ある程度まで簡単に勝ち上がっていけるかもしれない。…いずれ妥協するにしても、できるだけ上に行っていた方が、社会的な立場と自尊心の面で恵まれた状態でいられるだろう。努力とか根性とかと無縁でそれらを勝ち取れるというのだから、僕にそれを拒む理由は無かった。

「それじゃ、行き詰ったらまた連絡してよ」
 交換が終わると、彼はそう言って帰っていった。久々に親戚に会ったんだから、もうちょっと他に何かあるだろうと思ったが、彼は彼で忙しいのだと思う事にした。バトルフロンティアだかバトルタワーだかのために手持ちを育てなおしているとか言っていた気がするし。…もっとも、それがどんな施設なのか僕には分からないのだけど。

 一人取り残された僕は、とりあえず新たな手持ちの三匹をボールから出してみた。
「…ええ?」
 どんなごついのが出てくるのかと身構えていたら、見事に肩透かしを食らった。人間の子供くらいのサイズが二匹と、さらにちっこいのが一匹。どれも世間的には可愛いと言える見た目ではないだろうか。
 とりあえず一匹ずつ見ていこう。添えられていたメモを見ながら、僕はポケギアを起動させた。科学の進歩によるものだろう、今では手持ちのポケモンの能力値や技だけでなく、性格や過去の記録なども表示する事ができる。

 『ジラーチ レベル5 おや:ネガイボシ』
 最初に目を引いたのはやはりこいつだった。確か伝説の類の一匹だったような気がする。七夕限定で、一部の人のところにだけ舞い降りるとかいうアレだ。そしてその隣の一際小さいのは…
 『ピチュー ♀ レベル30 おや:しょこたん』
 これも多分限定ものだろう、色違いだ。あと普通のピチューと違って耳に切れ込みが入っている。だから何だと言わないで欲しい、それは僕が聞きたい。彼のメモによると通称ギザ耳ピチューと言うらしいが、ギザカワユスとでも言えば良いのだろうか、反応に困る。
 二匹とも戦闘向きには見えないのでメモを読み進めると、案の定戦闘用に渡したわけではないと書いてあった。この二匹は噂によるとポケウォーカーにおいて追加要素があるらしい。ポケウォーカーはジョウト地方限定のはずなので自然な流れかも知れない。良い商売してやがるなというフレーズが頭を過ぎったが、多分それは気のせいだろう。

 では残りの一匹。こいつが僕にとっての幸運、となるはずだ。
 『クチート ♂ レベル70 おや:はづき』
 今度は限定とかイベントとかとはちゃんと無縁のもののようだが…
 二足歩行。サイズだけでなく見た目もまるで人間の子供のようだ。だが後頭部から伸びるポニーテールのような部位が、人間とは一線を画している。ぎざぎざの鋭い牙を覗かせるそれは、自身の身長ほどもある巨大な口だ。可愛い外見で油断させ、その口でがぶっと。図鑑にもそう書いてあるのだから間違いは無いだろう。
 しかし何はともあれレベル70というのは心強い。今この町の近くにはレベル4のコラッタ一匹で勝負を挑んでくるような奴しかいないのだ。比べ物にならないという感覚はちゃんと伝わってくれていると思う。

「よろしくな、クチート」
 ジラーチとピチューをボールに仕舞い、握手でもしようと手を伸ばしたところ、目の前で巨大な口がばつんと音を立てて閉じた。咄嗟に手を引っ込めなかったら、手首から先が無くなっていたかも知れない。嫌な汗が背中を伝った。
 『性格:いじっぱり』
 ポケギアに表示されたその言葉で自分を納得させ、激しく鳴る心臓を何とか落ち着ける。
 とりあえず、今日はもう帰ろう。 このページのトップへ

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